今更聞けない肉離れの基本|起こりやすい場面・対処法を解説!

スポーツ現場で起こる外傷の代表格『肉離れ』

症状や起こりやすい場面、対処法や予防法など
今更聞けない肉離れの基本についてまとめました!

肉離れとは

肉離れとは、筋肉が引き伸ばされると同時に収縮するときに起こる筋肉の損傷、断裂のことを言います。

そのほとんどが下肢の筋肉で起こることが多く、ダッシュのスタート時や走っている時などに急激な力が筋肉に働いたときに起こるものです。

損傷度別の肉離れの症状

経験がある人はわかると思うのですが、発症したときには「ばちっ」という断裂した音を自分自身で感じることがあり、痛みを伴うことが多いです。

Ⅰ度損傷

比較的軽い損傷で筋組織の微少損傷のこと。

部分的に少しダメージを受けている状態です。
痛みは少しありますが、歩行にはあまり支障はありません。

Ⅱ度損傷

筋線維の部分断裂のこと。

外観上から見て内出血を起こしていることも多く、強い痛みも伴っているので歩行はかなり厳しい状況です。

運動もすることはできません。

Ⅲ度損傷

筋肉の完全断裂のこと。

触診をしてみると断裂した部位に凹みや陥没が確認できます。

内出血もあり、歩行はほぼ不可能な状態。

回復するまでにはかなりの期間が必要になるので早めの医療機関の受診が必要になります。

 

肉離れの痛みの評価

肉離れによる痛みの評価には主に以下の3つがあります。

  • 伸ばしたときの痛み(ストレッチ痛)
  • 押したときの痛み(圧痛)
  • 力を入れたときの痛み

評価をする際にはこの3つを確認し、これら全てに当てはまると肉離れの確率は高くなります。

肉離れの受傷機序

肉離れは遠心性収縮という筋肉が伸ばされながら力を入れている時に受傷することが多いです。

例えば、膝を曲げる作用を持つハムストリングスの肉離れでは、
走っているときの着地時にはハムストリングスの持つ膝屈曲作用、股関節伸展作用の反対に伸ばされる力(遠心性収縮)が生じます。

その際の伸ばされる力にハムストリングスが何らかの原因で耐えられなかった時に筋肉が損傷または断裂が起こります。

また上半身に起こる肉離れの例としては、ベンチプレスをやっている時の大胸筋の肉離れです。

ベンチプレスの際のバーを降ろす時には強大な遠心性収縮(耐えながら力を入れる)が大胸筋に起こります。

その際に大胸筋に最も負荷のかかる、バーが最も下(肘と同じ高さ)に来た時に起こりやすいとも言われています。

 

トレーニング中に怪我をしてしまっては元も子もないですよね。

次の項目では、起こりやすいスポーツ動作、筋肉について説明していきます。

 

肉離れの起こりやすいスポーツ、筋

・短距離陸上選手
→スタート時のハムストリングス

・サッカー選手
→急なダッシュやシュートなどによる腓腹筋、大腿四頭筋

・テニス選手
→レシーブレシーブ時の腓腹筋

・バレーボール選手
→大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋等

・バスケットボール選手
→大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋等、シュート時の上腕三頭筋

・ベンチプレス
→大胸筋

上記のように肉離れは下肢の筋肉に多く、特にハムストリングス(太ももの裏の筋肉)や大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)に起こることが多いです。

また、まれではありますが上肢や腹筋に肉離れが起こることもあります。

 

肉離れの応急処置

肉離れの基本的な処置はRICE処置になります。

R(rest 安静)
I(ice 冷却)
C(compression圧迫)
E(elevation挙上)

RICE処置については、こちらの記事で詳しくまとめているので参考にしてみてください!

今更聞けない応急処置の基本「RICE処置」

特に、内出血の拡大を防ぐために受傷直後のアイシングは重要です。

出血が拡大することで患部以外にも血腫が増えてしまいます。

すると、内出血した血液が体内に吸収される(血腫が消える)のに時間がかかるため、結果的に治療期間が長引く原因となります。

そして肉離れは筋肉が伸ばされながら損傷されているので、

ハムストリングスの場合なら、膝を軽く曲げた状態で、筋肉をさらに伸ばさないようにしてアイシングを行うようにしてください!

 

ただしアイシングもやりすぎには注意です。

冷やしすぎると、血流が滞りすぎてしまいます。

そうすると組織を修復する作用を持つ血小板が、損傷した部分で不足して、治りが遅くなってしまいます。

安易に冷やし続けるのではなく、一定間隔で中断して怪我をした部分に血流を戻すことも大切です。

今後の治療が速やかになるような応急処置をしましょう。

 

目安としては、1回に1520分のアイシングをして40分以上空けるというサイクルを受傷後48時間繰り返すと良いと言われています。

肉離れの予防法

ここまで可能性や応急処置についてお伝えしましたが、
そもそも受傷しないことが大切です!

肉離れの予防法についてまとめました!

適度なウォーミングアップ

肉離れの原因の一つに筋肉が固まっている状態の時、急激に伸ばされて受傷する事があります。

特に寒い冬の時期は筋肉が固まりやすく固い状態だと強い外力が加わると筋肉が切れやすくなります。

そのため運動前には適度なウォーミングアップで筋肉の温度を高める事で柔軟性を高めて筋肉が切れることを予防します。

ストレッチ

筋肉が暖まっているとしても、そもそもの可動域が足りずに過度に筋肉が伸ばされて筋肉が切れる恐れがあります。

日頃からストレッチをすること、運動前にしっかりと目的を持ってストレッチをする事が大切です。

ストレッチについて詳しくはこちらにも載っていますのでチェックしてみてください!

https://trainers-academy.net/stretch-basis/" data-blogcard="1" target="_blank" rel="noopener">学生トレーナーが知っておくべきストレッチの基本 

トレーニング

肉離れは急な外力や柔軟性がかけている時に起こりやすいものではありますが、そもそもの筋力不足も原因の1つです。

たとえ強い外力であるとしてもそれに耐えられるだけの筋力が備わっていれば起こることを予防できる可能性があります。

トレーニングの基本原則についてもまとめているので、チェックしてみてください!

学生トレーナーが知っておくべきトレーニングの7原則

最後に

肉離れは身近に起こりやすいスポーツ外傷の一つですが、症状が重いと復帰までに時間がかかってしまう事があります。

トレーナーとしては防がなければならないものであるし、起こってしまった際も、的確な処置を迅速に行う事ができるかどうかで選手の今後にも関わります。

是非皆さんの周りの選手のために予防、処置をできるトレーナーになりましょう!!

 

○参考文献

・肉離れの治療と再発予防 筋肉の柔軟性 改善予防

https://www.asahi.com/articles/ASJ1Q6QZBJ1QUBQU00K.html

・肉離れ 日本整形外科学会

https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/pulled_muscle.html

・肉離れ 日本整形外科スポーツ医学会

http://www.jossm.or.jp/series/flie/005_2.pdf

・肉離れ SPORTS MEDICINE LIBRARY ザムスト ZAMST

https://www.zamst.jp/tetsujin/thigh_calf_shin/muscle-strain/

 

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